バイオシミラーのより効果的な上市を求める最新のポリシーレビュー

要旨出版日:2021年8月
現在、抗がん剤の新規承認のほぼ三分の一が生物製剤であり、そのほとんどがバイオシミラーである。このような状況を踏まえ、The Lancet Oncology誌に掲載された最新のポリシーレビューで、新規バイオシミラーの市場参入に関する潜在的な障壁を分析し、これを克服するための方法を提案している。

生物学的製剤が特許権を失うと、バイオシミラーの普及が一気に進む。しかし、バイオシミラーが利用可能になって以来、品質への懸念から、当初、欧州医薬庁(EMA)では新規承認申請の10件に1件近くが却下され、 米国食品医薬品局(FDA)では、半数近く(44%)が却下された。日本の医薬品医療機器総合機構(PMDA)では、申請数が各段に少ないが、これまでに一件も却下されていない。

EU(欧州連合)では、規制のガイドラインやリスク許容度が米国よりも高く、米国は、特に適応症の外挿、つまり、バイオシミラーを、オリジナルの生物学的製剤と同じ適応症に対して承認することに対し、厳しい基準を設けている。この制限は、明らかにバイオシミラーの市場競争を妨げており、連邦法によって対処されるべきである。また、米国では、バイオシミラー製品が互換性の指定を受けていないため、バイオシミラーを薬局レベルで代替して処方することはできない。EUでは自動代替が普及しているにもかかわらず、日本では自動代替が禁止されており、日本でも、EUに追随して自由化をすすめることが望まれる。

米国では、特許権侵害訴訟によって、承認されたバイオシミラーであっても販売が妨げられる可能性があるが、EUや日本では、この傾向は顕著には見られない。特許訴訟を減らすための一つのアドバイスは、当事者系レビュー(Inter Partes Review)による和解で、数百万ドルの訴訟費用に対し、数十万ドルで済む。

バイオシミラーの安全性や有効性が、基準となる生物製剤に比べて低いという誤解は、バイオシミラーの市場導入を妨げることが知られている。生物製剤メーカーによる誤解を招くような情報の流布など、反競争的な行動の抑制や、米国臨床腫瘍学会(ASCO)、欧州臨床腫瘍学会(ESMO)、日本の厚生労働省といった影響力のある機関が、バイオシミラーに関する、偏りがなく、専門的で、社会的な教育のアウトプットを増加させることに、さらなる努力の的を絞ることが必要である。

EU、米国、日本において、医療制度によって定められるバイオシミラーの価格は異なる。各地域でのオリジネーター生物学的製剤価格に対する割引率は、概ね10〜30%程度である。しかし、リベートやフォーミュラリー上の優先順位により、生物学的製剤は、最も安価な選択肢となることが多い。バイオシミラーの競争力と購入しやすさを向上させるためには、費用対効果の増分決定や、遅延損害金制度の最小化、価格協定の透明化といった取り組みが、これまで以上に必要となる。

重要なポイント

バイオシミラーの安全性と有効性に関する誤った情報や誤解に対する早急な対処が求められる一方、製薬会社による反競争的な行為が、抑制されなければならない。バイオシミラーの競争力と購入しやすさを向上させるには、価格設定、リベート、費用対効果の判断を透明化する必要がある。

急速に変化する市場において、バイオシミラーの互換性をどのように説明するのが最良か?

要旨出版日:2021年8月
バイオシミラーは、基準となる生物学的製剤と高度に類似した製剤として承認されるが、必ずしも両者に互換性があるわけではない。市場が、低価格のバイオシミラーやベストバリューの生物学的製剤に対応する方向に進む中、臨床医は、どうすれば安全な切り替えに確信が持てるか。

生物学的製剤は、遺伝子組換え微生物から精製された抽出物を用いて製造された複雑な分子であり、製剤を開発した企業が、通常10年間特許を取得する。特許が切れると、他のメーカーは、バイオシミラーと呼ばれる生物学的製剤の後続品を販売することができる。バイオシミラーは、製造工程の違いから生物学的製剤と同一とは見なされず、臨床的に意味のある違いがない「高度に類似した」製剤である。

米国では、互換性は各州の法律で決められており、これは、処方者の介入なしに、薬局レベルで生物学的製剤のバイオシミラーへの切り替えが可能であることを意味する。互換性があると判断されるためには、申請医薬品は、生物学的類似性を証明すると共に、どのような患者においてもオリジネーターと同等の臨床効果が期待でき、切り替えによって検出可能な有害な影響がないことを示すエビデンスが必要である。

生物学的類似性が自動的に互換性を意味するわけではないので、最近のある研究で、規制当局の両方の認定に関わる要素、つまり、(1)生物学的類似性と(2)互換性、を盛り込み、これらを同時に裏付けることを目的とした以下のような試験設計が検討された。(1)試験参加者は、バイオシミラーとオリジネーターの安全性と有効性を調査する、無作為化されたヘッドツーヘッドの比較試験に登録される、(2)参加者は、生物学的製剤とバイオシミラーをそれぞれ少なくとも一期間投与する、切り替え試験に再無作為に登録される。評価は、薬剤の薬物動態と免疫原性のプロファイルに焦点を当てるべきである。

研究結果

研究者らは、互換性の指定を裏付けるために切り替え試験を実施することは、必須ではないかもしれないと結論づけている。臨床現場では、生物学的製剤とバイオシミラーの間で複数切り替えが日常的に行われており、このアプローチの経験を蓄積することで、豊富な「実世界」のデータを得ることができる。将来的には、プロスペクティブな登録試験や臨床試験(実世界の要素を含む)により、互換性を確立するための専用の切り替え試験の必要性はなくなるかもしれない。

重要なポイント

日常診療では、生物学的製剤とバイオシミラーの間で「実際に」切り替えが行われている例が多数ある。このデータを照合すれば、ある特定のバイオシミラーの互換性指定に際して役立つ、切り替えに関する豊富な情報を得ることができる。